あなたも働きすぎてない? キキ・パーマーが語る「NO」ということの重要性

「試練の数だけ自分を愛せるようになったと思う」

keke palmer

29歳の俳優、キキ・パーマーは、一度会ったら忘れられない人の典型。話し方ひとつ取っても、大砲のごとく矢継ぎ早でエネルギッシュ。スパのあとでさえ、任務遂行中の女性隊員を思わせるような速さで歩く。

実際に今日のキキは、5日間のリトリートについて語るという大事な任務に就いている。「スパだけど、ヘルスクリニックみたいなスパだから、瞑想したり、休んだり、ヨガをしたり、ジュースを飲んだり、ワークアウトをしたりした。なにもかもがスピリチュアルで健康志向」。つまり、キキは自分を甘やかしていたわけではなく、多忙な時期に向けて体と心を整えていたということ。

いかんせん、数週間後には慌ただしいプロモーションツアーが控えている。ダニエル・カルーヤとスティーヴン・ユァンと共に主演を務めたジョーダン・ピール監督の最新作『NOPE(ノープ)』のプロモーションでは世界一周。イジーの声を担当したディズニー&ピクサー映画『バズ・ライトイヤー』のプロモーションでは、ワシントンDCにあるアメリカ海軍天文台で副大統領のカマラ・ハリスと会うことになっている。20年以上にわたる女優キャリアの中で、これほど大きな役割を担うのは初めてのこと。

今回は、アメリカ版ウィメンズヘルスからキキ・パーマーのインタビューを見ていこう。

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「『ノープ』のプロモーションでは、いろんなところへ行く予定。韓国、ドイツ、ロンドン、パリ。ものすごく楽しみだけど、体には大きな負担がかかるはず。大量のエネルギーを使って話したり、笑ったり、周りの人を巻き込んだりするわけだから。中途半端なことはしない主義。なにをするにも全力よ」

旅先では健康的な食生活を続けるのも難しい。「疲れているからといって体に悪いものばかりを食べたり、食べるのを忘れたりしないように準備しておかないと。体は絶対ベストな状態にしておきたい」

だからキキは、カリフォルニアのデザート・ホット・スプリングス(砂漠の中の温泉地)のリゾート施設でウィートグラス(小麦若葉)のジュースを飲み、レイキを受けて、マリという名のシャーマンによる浄化の儀式に参加した。先手を打つとは、まさにこのこと。エネルギーのリチャージではなくプレチャージ。勢いよく流れる川に飛び込む前に大きく息を吸うようなもの。「この数年で学んだことがあるのよね。正気を保ち、体が動く状態を維持するためには、できるだけ頻繁に自己投資しなくちゃいけない」

かといって、いつの時代もセルフケアを優先してきたわけじゃない。女優になったばかりの頃は、「疲れ果てるまで」がむしゃらに頑張ることが多かった。

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キキはイリノイ州クック郡のロビンズ出身で、4人きょうだいの上から2番目。両親に芸術的な自己表現を促され、小さい頃から教会の聖歌隊で歌っていた。そして9歳のとき、ミュージカル『ライオンキング』のオーディションに参加。役はもらえなかったものの、このときから「演じることが本当に楽しくなった」

キキの演技指導をしてきた母のシャロンは、いまも彼女のキャリアアドバイザー。「母はドラマやコメディのキャラクターを分析する方法や、シーンの中にリズムを見い出す方法を教えてくれた。いつの日か、シャロン・パーマーの演技法を世界中に伝えたい。母は本当に教えるのが上手いから。冗談抜きで素晴らしい」

スクリーンデビューを果たしたのは11歳のとき。映画『バーバーショップ2 グッド!』でクイーン・ラティファの姪を演じた。2年後の2016年には、映画『ドリームズ・カム・トゥルー』でスペリングビー全米大会の優勝者アキーラ・アンダーソンを演じた。共演者のリストには、アンジェラ・バセットやローレンス・フィッシュバーンといった大物がズラリ。

でも、キキは引けを取らなかったどころか、批評家に「まさに素晴らしいのひとこと」といわせるほどの演技を見せた。そこからのキキ(本名:ローレン・キヤナ・パーマー)は破竹の勢いで、歌手デビューをしたかと思えば、アメリカのコメディドラマ『トゥルー・ジャクソン VP』の主役に大抜擢された。

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プロフェッショナルな職業倫理は早い段階で身につけた。「ディズニーやニコロデオン(いずれもアメリカのキッズ向けチャンネル)で仕事をすれば、いやでもプロらしくなる。あの人たちは相手が5歳の子どもでもまったく容赦しないから!」。スターダムにのぼりつめたのはいいけれど、あまりのスピードに音を上げそうになったこともある。

実話に基づく映画『奇跡のロングショット』ではアイス・キューブと共演し、クォーターバックとして地元のチームをポップワーナー(少年フットボールリーグの)スーパーボウルに導いた若い女性を見事に演じた。でも、この映画の撮影がデビューアルバム『So Uncool』のリリース直後に始まったため、「撮影現場で何時間もアメフトの練習をして、週末は米軍基地で歌う」日々が続いたそう。当時、若干14歳。

「がむしゃらに頑張る癖がついていた。まあ、がむしゃらなのはアメリカも同じだから、私が初めてではないけれど」。無理がたたって倒れたり、声が出なくなったりしたこともある。「一度動けなくならないと、自分に必要なことが分からなかったりするのよね」

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17歳でセラピーを受け始め、その翌年にヨガを始めた。最初は正直、見た目のためにやっていた。「『アクション映画に出たいからスタイルをよくしたい』みたいな感じで」と、笑って当時を振り返る。「最初は薄っぺらい理由で始めた。それはそれでいいと思う。のっけから真面目である必要は必ずしもないからね」

でも、ヨガを続けているうちに「クラスメイトと競い合っている場合じゃない。自分のゾーンに入らなきゃ意味がない」と思うようになったそう。「必死になってシックスパックを作らなくても、心と体と魂はケアできる」

気づいたことはほかにもある。自分が女優や歌手として成功したのは、本気の努力を重ねたから。セルフケアも同じくらい頑張れば、いいことがあるに違いない。だから「演技を頑張るのと同じくらい自分を大切にしなきゃいけないと思ったの」

おばあちゃんには、寝る前に祈ることも教えられた。祈った分だけ救われるということは、頑張った分だけ元気でいられるということになる。それに気づいたときからキキは「自分がどうやって生きたいかを考えるようになった」そう。

2021年、キキは多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)であることをインスタグラムで公にした。PCOSは、アンドロゲンが過剰に分泌されるせいで、頑固なニキビや生理不順が生じる内分泌疾患。この投稿では、加工・修正なしの写真で、キキを長年悩ませる顔のニキビを隠さず見せた。

アメリカ疾病管理予防センターによると、PCOSを抱える女性はアメリカだけで500万人。PCOSには治療法がないけれど、抗炎症性の食生活を送り、病状悪化の原因となるストレスを運動で発散すれば、症状が緩和するという声もある。

多忙なキキがハマっているのは、ヨガとピラティスを融合させた幅広いエクササイズと瞑想が楽しめる『メリッサ・ウッド・ヘルス』というアプリ。「ピラティスをすると体の調子が驚くほどよくなるの」。しかも「このアプリには10分、15分、40分の動画がある。本当に10分しかないときもあるから便利」

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今日のキキは、オリーブ色のハイウエストのレギンスに薄手のパーカーを羽織り、ファーつきのサンダルを履いている。編み込みのお団子ヘアにノーメイク。笑顔は相変わらず華やかで、全身からは温かさとカリスマ性があふれ出ている。その存在感と人を虜にするような立ち振る舞いで、2014年には冠番組『ジャスト・キキ』で史上最年少のトークショー司会者となった。

最近は、いたるところでキキを見かける。アメリカのHBOのダンス系リアリティ番組『レジェンダリー』では審査員を務め、奴隷の女性が自由になって復讐を試みるスリラー映画『アリス』では主役兼製作総指揮。フェイスブックウォッチのリアリティ番組パロディ動画『Turnt Up With the Taylors』シリーズでは全キャラクターをキキが1人で演じ、2021年のエミー賞を受賞した。

現在製作中のアニメーション・コメディ映画『ザ・ホスピタル』には、ナターシャ・リオンやマーヤ・ルドルフと共に出演予定。近々Youtubeチャンネルを立ち上げて、台本のあるコンテンツとないコンテンツを配信することも決まっている。これだけ忙しければ、数日間の“ミータイム”が欲しくなって当たり前。

5日もスパで過ごせることは滅多にない。でも、キキいわく、心身の健康を維持するうえで本当に大事なのは、スパに通うことよりも「NO」といえるようになること。

「なかなか『NO』といえないのは、そのチャンスを逃したら次はないと思っていたり、自分が間違っているような気がしたり、人を不快な気分にさせるのが怖かったりするから。でも、『YES』をいいすぎることが私にとって大きなストレスになっていた」

だから、キキは恐れを捨てる努力をしている。「すでに決まっていることを変えられるようになったし、自分を傷つけずに全部はできないということを受け入れられるようになった」。つい最近も『YES』といいたい仕事のオファーを受けたけれど、タイミング的に無理だった。「2~3年前の私なら『断ったらキャリアが終わる』と思っていたはず。でも、今回は『物理的に不可能。過酷な労働で自分の名誉を傷つけることになるから、断るしかない』と思った」

キキいわく成功はバランスの中にある。なんにでも「YES」というほどの熱意を持つのはいいけれど、ときには「NO」といってペースを落とし、自分を守る勇気も必要。「NOと言うようになってから2年経つ」と笑顔のキキ。「最近は、ちゃんと断れるようになってきた。明るい兆し。試練の数だけ自分を愛せるようになったと思う」

ウィメンズヘルス

 

※この記事は、アメリカ版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: Jeannine Amber Translation: Ai Igamoto

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