青アザや極度の疲労?! 卵子凍結をしたライターの体験談

卵子を凍結するために、毎晩自分でホルモン注射をしているなんて25歳の自分に言ったら、笑われたに違いない。

repeated eggs on the pink background
Yulia ReznikovGetty Images

片手に注射器を持ち、息を止めたら、おなかを目がけてぷすりと刺す。今日はまだ1回目。「一体、何がどうなってこんなことに?」と自問自答を繰り返す。卵子凍結を経験したエディターが準備から本番までの流れ、そして心と体に起こった変化を話してくれた。オーストラリア版ウィメンズヘルスから見ていこう。

卵子を凍結するために、毎晩自分でホルモン注射をしているなんて25歳の自分に言ったら、笑われたに違いない。

予定では、35歳までに1人目の子どもを産んで、寝室が3つある小さな庭付きの家を買って、旦那とペットと仲良く暮らすはずだった。でも、33歳でパートナーと破局して、夢が見事に砕け散った。

そして、2021年3月、私は夜な夜な不妊治療のサイトを見ていた。コロナウイルス感染症のパンデミックは、私たちの人生に「待った」をかけた。私も多くの人と同様、冷静さを失っていたのかもしれないけれど、失われた時間を取り戻すには卵子凍結しか残されていないような気がした。でも、そう感じていたのは私だけじゃなかったようで、卵子凍結の検索件数は着実に増え続け、2021年の10月に最高記録を樹立した。オーストラリアの不妊治療クリニックでも、パンデミックで卵子凍結の需要が急激に増えていた。

卵子を凍結する女性の平均年齢:37歳
出所:豪ヴィクトリア州生殖補助医療局

卵子凍結とは?

卵子凍結は、1日2回、自分でホルモン注射を打って体内の卵子数を増やしてから、(希望に応じて)静脈麻酔下で卵子を採取するプロセスのこと。採取された卵子は、ガラス化保存法で凍結される。不妊治療コンサルタントのアミン・ゴージー医師は、その意味を詳しく説明してくれた。「ガラス化保存法は卵の中の水分を粉状にする新しい高速凍結方法です。この方法なら卵子が損傷しないので、凍結後と解凍後の卵子の生存率が95%くらいになります」

アメリカの調査によると、凍結した卵子を使って35歳以下の女性が80%の確率で妊娠するには、卵子を14個採取する必要がある。このマジックナンバーは36歳以上で17個、39歳では33個と一気に増える。35~39歳の女性が1サイクルで採取できる卵子の数は平均10個だけなので、年齢が私と同じくらいの人は、卵子を十分集めるためにサイクルを2~3回繰り返す必要があるかもしれない。採取された卵子は、解凍されるまで(オーストラリアのほとんどの州では最長10年)液体窒素の中で保存される。

つい最近まで、卵子凍結の身体的な負担と金銭的な負担は納得できるものじゃなかった。でも、私の中で不妊の不安は日に日に大きくなっていた。デートの相手を客観的に評価しようにも、「この人がパパになる人? 本当に?」という心の声が邪魔をする。だから私は、卵子凍結を“当面の不安を減らす保険”として考えることにした。

卵子凍結の1サイクルにかかる費用:8,000~10,000豪ドル(日本円で約80万~100万円)
出所:豪ヴィクトリア州生殖補助医療局

事前準備

自分の子宮を大画面で見たことはある? ない人はぜひ一度見てほしい。子宮の超音波検査の画像は、他の画像と一味違う。深く暗い洞窟の中で、濃いグレーの点と白い点が動きながら形を変える。他でもない命の源。

超音波検査を終えると、私の体が卵子凍結に適しているかを調べるための卵巣予備能検査が待っていた。画面を見ながら「卵胞の数は十分ですね」と言ったゴージー医師の話では、一般的に卵胞の数が多ければ卵子の数も多いらしい。でも、最終評価が下されるのは、血液検査で抗ミューラー管ホルモン(卵胞で分泌されるホルモン)の量を調べてから。

私の場合はGOサインが出たけれど、この検査が怖くて先に進めない人もいる。私の友人も、結果が悪くて不安が増すくらいなら「何も知りたくない」と言う。私は結果がどうであれ、知らないでいることのほうが怖かった。

検査を終えたら、生理の最終日または最終日の翌日から卵子凍結のプロセスに入る。まずは、ゴージー医師のクリニックで看護師さんからペン注射の方法を教えてもらう。「こんなの無理と思うかもしれないけれど、数日でプロ並みにうまくなるから大丈夫」なのだとか。

その日の夜、注射器を組み立てて、おへその下の脂肪をつまみ、注射器をグッと押した。鍼を抜くとズキズキして、少しだけ血が垂れた。下ろしていたレギンスを引っ張り上げてベッドに座ると、涙が出てきた。痛かったからじゃなくて、自分のしていることが急にリアルに思えてきたから。それでも、たった数日で注射が日常の一部になって、チクリという痛みも大して気にならなくなった。朝の注射は、コーヒーか甘い物を飲んだあと。なぜか、そのほうが痛々しい感じがしない。

注射を始めて1週間。おへその下に紫色と緑色が混ざったようなアザが出現。なんだか子宮が重く感じた。痛くはないけれど、子宮が動いているような、重いような変な感覚。注射自体は思っていたほど痛くない。ホルモンの増加と共に、自分に自信がついてきた。

出生時の卵子の数:約100万個
出所:MONASH IVF

いよいよ本番

卵巣が刺激され、卵子が増える一方で、疲労は極限に達していた。もともとエネルギッシュなほうではあるけれど、ほぼ毎日、夜9時には眠くなる。クタクタで生理のような痛みもあった。どれも普通のこととはいえ、対処するのは大変だった。注射による排卵の誘発には通常9~15日かかるけれど、私の場合は13日目にゴージー医師から採卵の準備が整ったことを知らされた。採取できる卵子の数が一番多いタイミングで、医師は患者に“トリガーを打つように”と指示を出す。このトリガーは、採卵の36時間前に打つ特殊な注射。

ゴージー医師いわく、このサイクルで予定される採卵数は4個くらい。オーストラリアのガイドラインによると、あとで妊娠するために卵子を残したいのなら、少なくとも15個は凍結することが望ましい。解凍時に卵子が傷つくかもしれないし、すべての卵子が受精するとも限らないので、採卵数は多ければ多いほどいいというわけ。このラウンドで4個しか採れないということは、第2ラウンドや第3ラウンドが待っているということになる。泣きながらクリニックを出たけれど、2~3日で割り切った。4は0よりいい数字。それに、まだ採卵のチャンスはあるから。

採卵の朝、私は母とクリニックを訪れた。採卵の当日と翌日は、体と心のためを思って会社を休んだ。卵子は、鎮静下で膣に鍼を入れて採取する。施術自体は30分もかからない。麻酔の時間を含めても、2時間でクリニックをあとにした。処置後の痛みは鎮痛剤を飲んで、しっかり休めば何とかなるレベル。そのあとは2週間、運動とセックスを避けるだけ。

1カ月後に始まった第2ラウンドでは、ゴージー医師が排卵誘発剤の量を増やした。15日目にクリニックから電話が来て、技師の方に「今回は21個も採れましたよ」と言われたときは、誇りと安堵、幸福感で全身が溢れかえった。これで終わった。やり切った。

採卵の1週間後、大好きな公園を歩きながら、ちょっと泣いた。やっと終わった、保険に入れたという喜びと同じだけ、まだ独身であることが悲しくて。こんな苦労をするはめになったことが悔しくて。こんなときは深呼吸。数回したら、また前に進もう。

卵子凍結のQ&A

sperm shape on female hand medical concept of fertilization
Irina ShatilovaGetty Images

信頼の置けるクリニックを見つけるには?

「実績と評価の高いクリニックを選びましょう」と話すのは、不妊治療スペシャリストのデイヴィッド・ウィルキンソン医師。「その医師やクリニックと直接接したことのある人から話を聞くのはいいですね」

卵子凍結ができない人は?

医師は事前に血栓や出血障害の病歴の有無を調べる。もちろん、年齢も大きな要素。「閉経後の女性には卵巣誘発剤が効きません」とウィルキンソン医師。「卵子凍結をするのなら、卵巣予備能が高いうちのほうがいいですね」

卵子凍結は赤ちゃんに影響するの?

「これまでの研究で、凍結した卵子から産まれた子どもは、それ以外の方法で産まれた子どもと同じくらい健康であることが分かっています」と話すのは、Monash IVFの不妊治療スペシャリスト、ジゼル・クロフォード医師。「初めて凍結した卵子から産まれた子どもは、いま20代前半です。これからもデータを集める必要はありますが、これまでの情報を見る限り、大丈夫そうですね」

卵子は最長どのくらい保存できるの?

「生物学的な観点から言えば、永久にです」とクロフォード医師。でも、保存期間は州の法律で決まっているため、5~15年と幅がある。「州によっては、あとで保存期間を伸ばすこともできるかもしれません。クリニックには最新の連絡先を伝え、あなたの意思が定期的に確認されるようにしておきましょう」

卵子凍結をするということは、卵子を使い切るということ?

「卵子凍結で自然な排卵プロセスが止まることはありません」とクロフォード医師。「通常の月経周期に合わせて、卵巣では20個の排卵候補生が育ちます。最終的に排卵する1人を除いて、他の候補生は成熟する前に死んでしまいます。卵子凍結は、この候補生たちを成熟させて、採取して凍結するプロセスです」

卵子凍結にリスクはあるの?

ウィルキンソン医師いわく、あるけれど低い。「大量の卵子が採取された場合には、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を発症することがあります。でも、このリスクは、新しい薬で最小限に抑えることが可能です。また採卵は、シンプルと言えど膣の外科的処置です。どんな外科的処置にも出血のリスクはありますが、熟練の外科医が担当すれば、このリスクも非常に低いはずですよ」

 

※この記事は当初、『Cosmopolitan UK』に掲載されました。

※この記事は、オーストラリア版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: Anonymous Additional Reporting: Penny Carroll Translation: Ai Igamoto

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